漢字ワールドものがたり 第2部 こわれた橋のむこう

第2話どちらが正しい?

草にかくれていた道は、思っていたよりも長くつづいていた。

六人は、草をかき分けながら進(すす)んだ。

道の右手には、こわれた橋(はし)の下を流(なが)れていた川が見える。

水はきらきら光りながら、遠くへ流(なが)れていく。

「こっちの道、お城(しろ)へつづいてるのかな?」

ソラがたずねると、レイは川の上の方を見た。

「まだ分からない。でも、道はつづいている」

「ぼく、先に見つけたいな!」

「俺(おれ)だって、負(ま)けないぞ」

レイは少しわらって、歩く足を早めた。

ソラも、あわててあとを追(お)った。

アカリとタクミ、シンも、二人につづいて進(すす)む。

ルウはみんなの少し上を飛(と)んでいた。

草のしげる細い道を、レイがふり返りながら歩き、ソラがついていく。ルウは空を飛ぶ

しばらくすると、草の中から、ちょろちょろと水の音が聞こえてきた。

「あれ? 川はあっちなのに、こっちからも水の音がするよ」

ソラは立ち止まって、耳をすませた。

「ほんとだね」とルウ。

二人が草の間をのぞくと、細い水の流(なが)れが見えた。

「小さな川かな?」

「水の通り道みたいだね」

ソラは、どこまでつづいているのか見たくなった。

一方、レイは足元の道を見ていた。

「こっちにも、まだ道があるぞ」

レイの見つけた道は、草の間を通って、少し先までのびている。

「じゃあ、どっちが正しい道なのかな?」

ソラが聞いた。

レイは、すぐに答えようとした。

自分が見つけた道の方が、お城(しろ)へ近づけるかもしれない。

でも、まだ行っていないのに、どうしてそう言えるのだろう。

「……まずは、たしかめよう」

レイは、そう言って道の先へ進(すす)んだ。

六人が水の音をたどっていくと、草の中から石をつみ重(かさ)ねた小さな穴(あな)があらわれた。

水は、その石の下をくぐって流(なが)れている。

けれど、石の上には土があり、草の道がそのままつづいていた。

「見て! 水が下を通ってる!」

ソラがしゃがんで、石の穴(あな)をのぞいた。

「でも、ぼくたちは上の道を通れるんだね!」

ルウが羽で上をさした。

道の下の石の穴を水が通っている。レイが道をさし、ソラがおどろいて水路を見る

「おもしろいね!」とタクミが言った。

「水の道と、ぼくたちの道が、上と下に分かれてる!」

アカリは、石の上の草を見た。

「ここだけ見ると、下に水が流(なが)れてるなんて分からないね」

レイは、石の穴(あな)と草の道を見くらべた。

水は下を通る。

人は上の道を通る。

どちらも通り道だけれど、同じではない。

「なるほど。水の音だけ追(お)っても、歩く道は分からないな」

レイが言うと、ソラもうなずいた。

「じゃあ、ぼくの見つけた水の道は、はずれ?」

「いや、そうじゃない」

レイは首をふった。

「ソラが水を見つけたから、この石の下に水が通ってるって分かったんだ」

「そっか!」

「俺(おれ)は上の道を見つけた。でも、この道がお城(しろ)までつづくかは、まだ分からない」

ソラはレイの顔を見た。

「じゃあ、二人とも見つけたものは正しかったんだね!」

「ああ。でも、見つけたことと、まだ分からないことは分けて考えないとな」

二人は顔を見合わせて、わらった。

六人は、石の上につづく草道を歩いた。

足元には平(たい)らな土がつづいていて、水はその下を流(なが)れている。

しばらく行くと、道が少しずつ高くなってきた。

草の間から、遠くの景色(けしき)が見える。

「わあ、ずいぶん高いところに来たね!」とアカリ。

レイは、来た道をふり返(かえ)った。

こわれた橋(はし)は、もう木のかげにかくれて見えない。

でも、あの橋(はし)が通れないことは、たしかだ。

一方、今歩いている道がどこへつづくのかは、まだ分からない。

「なあ、ソラ」

「なに?」

「道しるべには、『お城(しろ)へは通れない』って書いちゃだめだな」

ソラは首をかしげた。

「どうして?」

「通れないのは、あの橋(はし)だろ。お城(しろ)へ行く道がないって、決(き)まったわけじゃない」

「あっ、そうか!」

ルウもうなずいた。

「『橋(はし)は通れない』なら、たしかめたことをちゃんと伝(つた)えられるね!」

「うん! そっちの方がいい!」

ソラは、草道の先を見た。

レイも、その先へ目を向(む)けた。

早く正しい道を見つけたい気持(きも)ちは、まだある。

でも、ソラが気づいたことも、自分が見つけたことも、どちらも大切な手がかりだった。

「よし、もう少し進(すす)んでみよう」

レイが言うと、ソラは元気よくうなずいた。

「うん! 次(つぎ)は何が見つかるかな!」

六人は、高くなっていく草の道を歩き出した。

この話に出てきた漢字

字をおすと、その字のページでくわしく調べられます。

この話に出てくるキャラクター