漢字ワールドものがたり 第1部 きえた道しるべ
第3話作ってみよう
二まいの字札を持ったソラたちは、草の道を進んだ。石の道はおわり、しばらくすると、細い水の流れが道を横切っていた。
「三まい目は、どこだろう。ぼく、あの水のそばを見てみたい」
ソラが水の方へ向くと、だれかの声がした。
「そこはすべりやすいよ。足もとを見た方がいい」
声のした方には、一人の少年が木のえだを何本かならべていた。
「ありがとう! ぼくはソラ。風でとんだ字札をさがしているんだ」
「ぼくはタクミ。字札なら、さっき水の近くで見たよ」
アカリがうれしそうに手をたたいた。
「本当? わたしはアカリ。どこにあるの?」
タクミが指さしたのは、小さな石の下だった。水にぬれた木の札が、石と石のすき間にはさまっている。
「おっ、見えた! ぼくが取ってくる」
ソラが足を出すと、レイが止めた。
「待て。下の石がぬれてる。さっきみたいに、先に足もとをたしかめよう」
ソラは足を引っこめた。タクミは石のすき間を見て、目をかがやかせた。
「手がとどかないなら、道具を作ればいいんだ!」

タクミは、えだを二本重ね、先に小さなえだをつけようとした。草をむすんで、字札をつかむ道具にするつもりだった。
「ここを引くと先がしまるんだ。そうしたら、字札をつかめるはず!」
ところが、草のむすび目がほどけて、先のえだがぽとりと落ちた。アカリが草をひろってくれたが、タクミはむすび目を見つめたまま、なかなか手を止めなかった。
「もう一回! 今度はむすび方をかえて……」
「タクミ、それを作るのに、どのくらいかかる?」とレイが聞いた。
「うーん、まだ分からない。もう少しでできると思うんだけど」
ソラはすき間の字札を見た。水が小さく音を立てている。近くに見えるのに手がとどかないのが、ソラにはもどかしかった。
「ぼくも作ってみたい。でも、字札をつかまなくても、こっちへよせられないかな」
タクミは手を止めた。
「よせるだけ?」
「うん。下の石まで来たら、手がとどきそうだよ」
ルウが上からすき間を見た。
「字札の下に、ひらたい石があるね。そこをすべらせれば、水に落とさずにすみそう」
タクミは、作りかけの道具を見つめた。せっかく考えたのに、まだうまく動かない。でも、字札を取るために作っているのだ。
「そうか。大事なのは、ぼくの道具をかんせいさせることじゃない。字札をみんなで取ることだね」
タクミはえだの中から、先が二つに分かれた一本をえらんだ。
「これなら、そっとおせるかもしれない。ソラ、えだの元をささえてくれる?」
「もちろん!」
「レイは、石が動かないか見ていて。アカリは字札がどっちへすべるか教えて」
「まかせて! ルウも上から見ててね」とアカリが言った。

タクミはえだの先を石のすき間へ入れた。字札のはしにふれると、少しだけこちらへ動いた。
「今、ちょっと動いたよ!」とアカリが言った。
「右の先が石に当たってる。少し上げよう」とレイが声をかけた。
「あと少しだよ」とルウがつづけた。
ソラがえだをささえ、タクミがゆっくり動かした。字札はひらたい石の上をすべり、水のないところへ出てきた。
「やった! 取れた!」
タクミが字札を手に取ると、そこには「作」と書かれていた。
「『作る』の『作』だ!」とタクミが言った。
「ぴったりだね。タクミが道具を作ってくれたから!」とソラがわらった。
「でも、みんながいなかったら、むずかしい道具をずっと作ってたかも」
タクミは、ほどけた草のむすび目を見て、少しわらった。
「新しいことを考えるのは楽しい。でも、使う人がこまったら、もったいないね」
ルウが言った。
「これで三まい。あと一まいだね」
タクミは字札をソラにわたした。
「ぼくもいっしょにさがしていい? どんな字が出てくるか、気になるんだ」
「もちろん!」とソラがこたえた。
五人は水の流れをあとにし、残る一まいをさがして歩き出した。