漢字ワールドものがたり 第2部 こわれた橋のむこう
第5話あたらしい道しるべ
六人は、石の通路へつづく草の道を歩いていた。
木の間をぬけると、目の前がぱっと明るくなった。
「わあ!」
ソラが声を上げた。
下には川が流れ、その上に石でできた通路がかかっている。
通路は、川の向こう岸までつづいていた。
「あれなら、わたれるかもしれないね!」
ルウが羽を広げた。
レイは、石のならび方をじっと見た。
「まずは、近くでたしかめよう」
六人は通路の入り口へ進んだ。
石はしっかりと組まれ、上には人が歩ける広さがある。
シンも地面や石の様子をたしかめた。
「足元をよく見て、ゆっくり進むとよい」
「うん!」
ソラは、一歩ずつ石の上を歩いた。
川の音が、すぐ下から聞こえる。
こわれた橋とはちがって、ここには石の道が向こうまでつづいている。
六人は無事に川をわたった。

「やった! わたれた!」
アカリがうれしそうに言った。
「でも、まだお城へつづいているか分からないぞ」とレイ。
「そうだね。もう少し行ってみよう!」
六人は向こう岸の道を進んだ。
道は草の間をゆるやかに曲がり、やがて大きな建物が見えてきた。
高いかべ。
大きな屋根。
そして、そのまん中にある門。
「あっ! お城だ!」
ソラは目をかがやかせた。
ついに、お城の前まで来たのだ。
「この道、本当につづいてたんだね!」
ルウもうれしそうに羽を広げた。
六人は、門の前まで道がつづいていることをたしかめた。
けれど、ソラはふと、来た道をふり返った。
「ねえ、みんな。まだやることがあるよ」
アカリがうなずく。
「道しるべだね!」
「うん。あの分かれ道に、ちゃんと置かなくちゃ!」
タクミは、大切に持ってきた木の札を見た。
「形はできてるよ。あとは、何を書くかだね!」
六人は、たしかめた道をもどった。
石の通路をわたり、草の道を下って、二つに分かれた場所へたどり着いた。
タクミが、作っておいた札を取り出した。
「よし! 何て書こうか?」
「『お城へはこちら』でいいんじゃない?」とソラ。
アカリは、こわれた橋へつづく道を見た。
「でも、それだけじゃ、あっちの橋がこわれてるって分からないよ」
「あっ、そうだった!」
アカリは、前に枝を置いてたしかめた場所へ歩いた。
「ここから読めたら、二つの道をえらぶ前に分かるよね」
「じゃあ、『この先の橋』って書こうよ!」
ソラが言うと、レイが首をかしげた。
「それだけじゃ、橋がどうなってるか分からないぞ」
「たしかに!」
「俺は、『この先の橋は通れません』がいいと思う」
ルウもうなずいた。
「それなら、どこを通れないのか、はっきり分かるね!」
「でも、お城へ行く道も教えたいな」とアカリ。
「だったら、そのあとに書こう!」
ソラは、みんなの顔を見た。
「『お城へは、こちらの道を進んでください』ってどうかな?」
タクミがうれしそうに手をたたいた。
「いいね! それに、矢印もつけよう!」
タクミは、二つの道を見くらべた。
「この前みたいに、札がくるっと回っちゃったらこまるもんね」
「こっちの道をさすように、しっかり決めよう」とレイ。
シンは、六人が考えた言葉を聞いていた。
「みんな、その道がお城へつづくことは、たしかめたかな?」
「うん!」とソラ。
「石の通路をわたって、お城の門まで行ったよ!」
「ならば、自分たちでたしかめたことを伝えられるのう」
ソラは、もう一度、みんなで決めた言葉を読んだ。
「この先の橋は通れません。お城へは、こちらの道を進んでください」
「うん! これにしよう!」
タクミは木の札に、決まった言葉を書いた。
そして、草にかくれた道をさす矢印をつけた。
「できた!」

タクミは、札を支える木を地面にしっかりと固定した。
アカリは、前に目印を置いた場所から見てみた。
「うん! ここならよく見える!」
レイは、矢印の向きをたしかめた。
「まちがいない。お城へ行く道をさしてる」
ルウも、少しはなれたところから見た。
「言葉も読めるよ!」
タクミは、札が動かないことをたしかめた。
「これなら大じょうぶ!」
ソラは、新しい道しるべを見上げた。
初めてこの世界へ来たとき、字の見えない古い道しるべに出会った。
あのときは、みんなで四まいの字札をさがした。
「友と考え、作って進む」
だれかが残した字を取りもどして、道しるべを直した。
でも、今度はちがう。
自分たちで道をたしかめた。
どんな言葉なら分かるか考えた。
そして、自分たちの言葉を、ここに残したのだ。
「ねえ、ルウ」
「なあに?」
「ぼくたち、道しるべを作っちゃったね!」
「うん! みんなで作った道しるべだね!」
ソラは、うれしくなってわらった。
「さあ、行こう!」
六人は、新しい道しるべがさす道へ進んだ。
草の道を上り、石の通路をわたり、川の向こう岸へ。
もう、どこへ行けばいいのか分かっている。
しばらく歩くと、お城の大きな門が見えてきた。

六人は門の前に立った。
大きな門は、かたく閉じられている。
「ここまで来たんだね……」
ソラは、見上げるようにして言った。
あの道しるべがなかったら、ここまで来られただろうか。
ルウが、ソラのそばにとまった。
「お城の中には、何があるんだろうね?」
「分からない。でも、ぼく、見てみたいな」
ソラがそう答えた、そのときだった。
ことん。
小さな音がした。
六人は顔を見合わせた。
「今、何か聞こえた?」
アカリが小さな声で言った。
ソラは、大きな門を見つめた。
音は、門の向こうから聞こえてきたようだった。
でも、何の音なのかは分からない。
ソラは、そっと耳をすませた。
お城の門は、まだ閉じられたままだった。