漢字ワールドものがたり 第1部 きえた道しるべ
第0話きえた道しるべ
ソラは、道ばたにあるふしぎなしるしを見つけた。
文字ににているのに、何と書いてあるのか分からない。光をうけると、しるしがちらりとゆれたように見えた。ソラはもっとよく見たくなって、一歩近づいた。
「なんだろう、これ。もう少し近くで見てみたいな」
そのしゅんかん、足もとのけしきがふっと遠のいた。
気づくと、ソラはやわらかな草の上に立っていた。頭の上には広い青空。遠くに城が見え、空にうかぶ草の島から、白い水の流れが落ちている。

「えっ? さっきの道はどこ? ぼく、どうなっちゃったんだろう」
ふり向いても、元のけしきは見えない。知らない場所にいると思うと、むねの中が少し冷たくなった。
けれど、目の前の島をつなぐ細い道を見ると、知りたい気持ちもわいてきた。
「あんなところに道がある。どこへつづいているんだろう……。でも、帰るにはどうしたらいいのかな」
ソラはその道を歩き、二つに分かれたところで立ち止まった。そこには古い木の道しるべがあった。行き先を教えてくれるはずの板には、へんなすき間がある。
「『□と□え、□って□む』……? これじゃ、何て書いてあるのか分からないよ」
四つの□のところは、木が小さくへこんでいた。まるで、何かがそこにはまっていたようだ。ソラは一つ目のくぼみを、そっとゆびでなぞった。

「ここに何かあったのかな。せっかく道しるべを見つけたのに」
そのとき、頭の上から声がした。
「おや? 道しるべを見ているの?」
見上げると、一羽の鳥が空からおりてきた。ソラはびっくりして、二歩あとずさった。
「鳥がしゃべった! きみはだれ?」
「ルウだよ。ここは漢字の世界。道を知りたいの?」
「漢字の世界? ぼく、さっきまでちがうところにいたんだ。帰る道が知りたいんだけど……」
「そうなんだね。じゃあ、まずこの道しるべをいっしょに見てみよう」
ルウは板のそばまで来て、四つのくぼみを見た。
「ここには四まいの字札があったみたい。さっき強い風がふいたから、とばされたんだと思う」
「字札って、この□に入る字のこと?」
「うん。四まいそろえば、書いてあったことをたしかめられそうだね」
「じゃあ、おちているところをさがそう!」
そう言ってかけ出しかけたソラは、また足を止めた。目の前には、どちらも知らない道がのびている。
「……でも、むやみにすすんだら、もっとまよっちゃうかな」
「どこを先にさがすか、考えてみよう。風でとんだなら、近くにあるかもしれない」
ソラは道しるべの下や草の間を見た。風がふくと、草が同じ方へなびく。その先には細い道がつづいていた。
「ぼく、あっちをたしかめたい。何があるのか見てみたいんだ」
「いいね。道しるべが見えるところから、少しずつさがそう」
ソラはもう一度、字のぬけたことばを見た。まだ帰り道は分からない。ふしぎなしるしのことも、何も分かっていない。
それでも今は、たしかめたいことが一つある。ソラはルウといっしょに、草のゆれる道へ歩き出した。
