漢字ワールドものがたり 第1部 きえた道しるべ
第1話友だちの手
草が同じ方へなびく道を、ソラとルウはゆっくり歩いていた。後ろを見れば、字のぬけた道しるべがまだ小さく見える。
「強い風で、四まいの字札がとんだんだよね。早く見つけたいな」
「うん。でも、あわてて道にまよわないようにね」とルウが言った。
道は少しずつ高くなり、草の間から石が見えはじめた。ソラは木のかげに何か光るものを見つけ、かけ出した。
「あった! きっと字札だ!」
けれど、そこにあったのは小さな白い石だった。ソラはしゃがみこみ、がっかりして息をついた。
「そんなにいそいで、何をさがしているの?」
声の方を見ると、明るい声の女の子が立っていた。
「ぼくはソラ。風でとんだ字をさがしてるんだ。きみは?」
「わたしはアカリ! 字がとんじゃったの?」
ソラは道しるべに四つのくぼみがあったことを話した。
「そうなんだ。じゃあ、わたしもさがすよ! みんなで見た方が、見つかるかもしれないもん」
「ありがとう! こっちはルウ。いっしょにさがしてくれてるんだ」
「よろしくね、アカリ」とルウが言った。
三人が道のはしをたしかめていると、ルウが羽を小さく動かした。
「ほら、あそこ。木の根の下に、四角いものが見えるよ」

道の下にはあさいくぼみがあった。字札は木の根に引っかかり、手をのばしてもとどかない。
「ぼくが取るよ!」
ソラはおなかを地面につけ、うでをいっぱいにのばした。あと少し。でも、体が前へすべりそうになり、あわてて後ろへもどった。
「むりしないで。わたしがあっちから取ってみる!」
今度はアカリが道のはしへ回った。長いえだを引っぱろうとしたが、石の間にはさまって動かない。
「あれ? わたしならできると思ったのに……」
アカリはもう一度引いた。でも、えだはびくともしなかった。ソラとルウがそばに来ると、アカリは手をはなした。
「二人に手つだってって言えばよかった。みんなでさがすって言ったのに、わたしが一人でがんばってたね」
「アカリ、一人でやらなくていいよ。ぼくも手つだう!」
二人で小石をよけてから、長いえだをゆっくり引いた。今度はするりとぬけた。
「えだの先を見て。あのすき間を通せば、字札の下にとどきそうだよ」
「じゃあ、ぼくはえだをささえるよ。アカリは先を動かしてくれる?」
「うん。ルウ、見えにくいところは教えてね!」
「まかせて。あぶなかったら、すぐ止めよう」
ソラがえだの元をささえ、アカリが先を少しずつ動かす。ルウが上から見て、「右、もう少し左!」と声をかけた。
「今だよ、ソラ! もう少しだけ!」
「うん。せえのっ!」
字札が木の根から外れ、草の上をすべって道の上まで来た。三人は顔を見合わせた。

「やった! ソラもルウもありがとう!」
「アカリがいなかったら、ぼく、また一人でむりをしてたかも」
「わたしもだよ。みんなでやる方が、ずっとよかったね」
ソラが土をはらうと、木の字札には「友」と書かれていた。アカリはその字を見て、にっこりした。
「友だちの『友』だね。みんなで見つけた字にぴったり!」
「うん。ぼくが先に見つけることばかり考えてたけど、いっしょにさがすと、見えるものもふえるんだね」
「これで一まい。あと三まいだね」とルウが言った。
ソラは字札を大切に持ち、道しるべの方を見た。まだ文字のすき間はうまらない。けれど、何もなかった手の中に、一つ目の字がある。
「次も、いっしょにさがしてくれる?」
「もちろん! 今度は、みんなの考えを聞いてから出発しよう!」
三人は道の先を見わたし、足もとをたしかめながら歩き出した。