漢字ワールドものがたり 第3部 城の中の小さな声
第2話重なったとびら
ごとっ。
木のとびらが、少しだけ動いた。
「おっ、動いた!」
タクミは目をかがやかせた。
けれど、もう少し横へ押そうとすると、とびらはぴたりと止まってしまった。
「……あれ?」
六人は、城の長い廊下にいた。
さっきのウサギは、とびらの下の小さなすき間をくぐって、向こうへ行ってしまった。
ソラはしゃがんで、すき間をのぞいた。
「ウサギは通れたのに、ぼくたちは通れないね」
「ぼくたちには、ちょっとせますぎるね」とルウ。
タクミは、もう一度とびらに手をかけた。
「これ、横に動くとびらみたいなんだ」
木のとびらには、手をかけるための小さなくぼみがあった。
タクミがそこに指をかけ、ぐっと力を入れた。
ごと、ごとっ。
とびらは少し動いたが、また止まった。
「うーん、重いなあ!」
「俺も手つだうぞ」とレイが言った。
レイがタクミのとなりに立ち、二人で押してみた。
「せえの!」
ぐぐぐっ。
けれど、とびらはびくともしなかった。
「何かが引っかかってるのかな?」とアカリ。
「そうかもしれませんね」とシンが言った。
タクミは、とびらを見つめた。
重いだけなら、二人で力を合わせれば動きそうなのに。
どうして、いつも同じところで止まるのだろう。
「ちょっと待って。もう一回見てみる!」
タクミは、とびらの前にしゃがんだ。
下には、木のとびらがすべる細いみぞがある。
そのみぞは、一つではなく、二つならんでいた。
「あれ?」
タクミは顔を近づけた。
とびらのはしを見ると、奥にもう一まい、木の板が見えた。
「これ、一まいじゃない!」
ソラもしゃがんだ。
「ほんとだ! 二まいある!」
タクミは立ち上がり、とびらのはしを指さした。
「見て! ここ、二まいが重なってるんだ!」
手前のとびらが、奥のとびらの一部にかぶさっていた。
「だから、二まいあるのに、一まいに見えたんだね」とアカリ。
タクミはうなずいた。
「ぼく、ずっと重いから動かないんだと思ってた」
「でも、重なっている方が問題なんだね」とルウが言った。
タクミは、二つのみぞを順に指でたどった。
手前のとびらは、右へ動かせる。
でも、奥のとびらは、手前のとびらのはしに引っかかっている。
「そうか!」
タクミは、ぱっと顔を上げた。
「先にこっちをずらせば、奥の方も動くかもしれない!」
「やってみよう!」とソラ。
「待って。今度は、力いっぱい押さなくていいよ」
タクミは、手前のとびらにそっと手をかけた。
少しずつ右へずらしていく。
ごとっ、ごとっ。
二まいが重なっていたところが、だんだん小さくなった。
「ここまでなら動く!」

タクミは、次に奥のとびらへ手をのばした。
「今度はこっち!」
ゆっくり横へずらすと、さっき引っかかっていたとびらが動き出した。
「やった! 動いた!」
「なるほどな!」とレイ。
「強く押すより、順番が大事だったんだな!」
ソラとレイが手前のとびらをささえた。
アカリとシンは、奥のとびらがなめらかに動くように手をそえた。
タクミは二まいの重なりを見ながら、少しずつ動かすよう声をかけた。
「もうちょっと! そこで止めて!」
とびらの間が、大きく開いた。
六人がならんで通れるくらいの広さになった。

「すごいよ、タクミ!」とソラ。
「最初は、もっと力を入れればいいと思ったんだけどね」
タクミは少しはずかしそうに笑った。
「ちゃんと見たら、どう動かせばいいか分かったんだ!」
六人は、とびらの向こうへ進んだ。
そこは、丸い石のかべにかこまれた広い場所だった。
「わあ、ここは何だろう?」
ソラが上を見上げた。
奥には、ぐるぐると曲がりながら上へつづく石の階段が見えた。
「塔の中みたいだね!」とルウ。
その手前には、木でできた大きなたるが、いくつかならんでいた。
タクミは、たるの横を見た。
「あれ? あの子、もう階段の方へ行ったのかな?」
石の階段の下から、小さな足音が聞こえた。
とん、とん、とん。
「ウサギだ!」とソラ。
六人が階段へ向かおうとすると、アカリが足を止めた。
「ちょっと待って!」
大きな木だるが、階段の入り口をふさいでいた。
「これじゃ、通れないよ!」
タクミはたるを見た。
「今度は、こっちを何とかしなくちゃね」
六人は、木だるの前に集まった。